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【特許出願の分割】客体的同一の注意点

 

最近、日本国特許庁に出願された1年間の特許出願件数は、微増という数字が出ています。

 

かつての特許出願大国の再来かと思いきや、そうではありません。

 

内訳を見ると、中小企業の特許出願件数の増加とともに、出願分割が多いのです。

 

私も戦略的に出願分割を多用する時がある。

 

出願分割する意図は、出願人ごとに異なると思います。

 

さて、実務的に注意しなければならない点は、分割時の客体的同一です。

 

新しく分割して出願する特許請求の範囲(以下、「クレイム」という。)を作る。クレイムは、直前の明細書又は図面等の記載に基づき、新規事項にならないように注意する。

 

ここはOKなのですが、問題は明細書の課題解決手段です。

 

明細書の課題解決手段は、クレイムの内容をコピーするのが正解です。

 

これで客体的同一違反が指摘されたことはありません。仮にこれが客体的同一違反であれば、クレイムそのものが新規事項追加に該当しているはず。

 

クレイムのコピーは、請求項1~10等、すべての請求項をコピーするのではなく、上位概念だけで良い。

 

特許請求の範囲と明細書の課題解決手段の概念的な大小関係は、以下のとおりです。

 

明細書の課題解決手段>特許請求の範囲。

 

明細書の課題解決手段の少なくとも一部を特許請求の範囲で権利請求する性質がある。

 

なので、クレイムをすべて明細書の課題解決の欄に記載しておかなければならない必要性はありません。

 

注意するとすれば、明細書に記載されている従来技術の課題です。

 

結論として、従来技術の課題は変更しない方が無難です。

 

出願分割のクレイムと明細書の課題が対応しなくなるという懸念も出るが、原出願(親出願)では、明細書の従来技術の課題をふんわりした上位概念で記載しておくことにより、この懸念点は解消される。

 

以上をまとめると、出願分割では、新しいクレイムを作成し、明細書の課題解決手段にクレイムの上位の部分を記載しておく。

 

そのほかは変更しない。

 

要約書はクレイムに合わせる。

 

これで出願分割の実務で客体的違反が指摘されることはありません。